① 平和のありがたさ
私はまだ夢を見るんですよ。しかし,今,もう見ません。あと,2~3年前まではずっと夢を見ていたんです。それは,みんな同じ夢。小さいころ,子どものころの夢をですね,いつも自動小銃で追っかけられているんですよ。それで逃げ回る。自動小銃でね。そして,この山の上で来ますと,この山の上からポーンと飛んで,次の山の頂に下りるわけですね。
ところが,アメリカさんも,やっぱりこんなことをして,すぐ追っかけてくるんですね。そして,もう逃げられない。ウンウン唸って,結局,目を覚ますわけです。こういったのを毎晩のように見ていました。子どものころ。
そして,次は家内をめとって,子どもが4名できたんです。それでもまだこの夢を見るんです。ところが,夢が違っているんですよ。追っかけられているんですが,自動小銃で追っかけられているんだけれども,ところが,こちらは家内を連れ,子どもを4名連れて逃げんといかんわけです。4名連れて逃げるんですが。
ところ,結局,5名ですよね。その5名のなかで誰かが一人いないんですよ。いつも見るたびに。今日は家内がいなかったり,その次に見た夢は長男がいなかったりしてね。それをかき集めて逃がすのに一生懸命なんですよ。そのときにウンウン唸っているんですね。それで家内に起こされたりしたことがあります。
結局,あの戦争中で怖い目に遭ったことが,この2~3年前までそれが続いたんですね。夢がね。そして,その夢も年とともに変わったような夢になっちゃった。要するに,子どものころは自分一人逃げて,「もう怖い,怖い」と逃げていた。それから,家族ができたら家族を連れて逃げようとする。でも,その家族のうちの誰かがいない。それを探しているというふうに。そして,ウンウン唸っている。そんな夢を見たんです。
今,最近は,やっと落ち着いてそういう夢がなくなったんです。そして,今思うことはですね,平和でよかったなと。日本の国は,これまで戦争をしたことないですね。これは一番よかったんじゃないかと。他の国では,しかし,戦争が終わっても,まだまだあっちこっちでやっています。あっちこっちでやっているのが,日本はなかったんです。この平和のありがたさというのは,私はつくづくと思います。
そして,嫌な思いとか,恐ろしい思いとか,そんなことをすることはない。結局,平和であるということですよね。そして,私は戦争を嫌うんです,憎むんです。というのは,平和の反対は戦争なんですね。戦争というのは殺戮(さつりく),人を殺して,できるだけ多くの人間を殺す。そして,破壊,壊す,家を焼く,爆弾で吹っ飛ばす。こういった平和の反対はそれになる。
だから,私は戦争というのはうんと憎いんです。一回経験しましたんでね。二度と,こんなことがあってほしくないな。だから,今,うんと平和の時代を生きて,そして,今,幸せだなと思っております。