③ 避難小屋
ここ,ちょっと段になっているでしょ。それであっちもこう削っておって。ここに避難小屋が二つ建っていた。こっち(右側)は,こんなに竹が生えていなくって,こんなところ(草が生い茂る程度の土地)だった。だから裸足で皆,歩いてが…。ここに避難小屋が二つあって,(その右に)田んぼの後が何段かな…,二段くらいあって。これがシャクなんですよ。シャクね。
水は豊富なんです。向こうに泉があって。昔,田んぼもやっているくらいだから。水は豊富だった。今でも(草を)刈っていったら,かまどの跡なんかもあるはず。ここが避難小屋のあったところ。普通は,ここで生活している。そして,僕がいちばん恐ろしい目にあったのはここなんです。向こうから4名で,おじいちゃん,おばあちゃん,兄貴,僕と4名で降りてきたときに,この辺にアメリカ(兵)がいるのを見つけたんです。
そしたら「アメリカーどぅ。」(アメリカ兵だよ)と言ったら,またおばあちゃんに叱られたんです。「シカーぐわぁや。」(おくびょう者だね)。仕方がないから,ここと,ここの避難小屋に一人,この山の中に一人,3名で(銃を)構えているわけよ。それから,女性が一人ここにいた。沖縄(の人)か,日本(の人)かどっちか分からんが。一言もしゃべらなかったから。だぶんどこかで引っ張られて慰み者にされたんだはず。
我々は向こうから入ってきて,ここに(アメリカ兵が)隠れているのは分かっているんだが,仕方がないからここに4名座ったわけさ。女性はこの辺に座っておったんだが。そしたら,若い人がここ(左)の避難小屋にたくさんいたんで,この人たちが帰ってきたら,間違いなく殺されると思っていた。ところが,この人たちは兵隊とか防衛隊から帰った人たちだから,いろんな係を決めて,てきぱきとやっていたんだ。
そしたら,まずやって来たのが炊事当番。ここからタオルを出しながらね。避難小屋に(物干し用の)ハリガネをかけてあったから,これにこうして(タオルを掛けようとした)…。
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そしたら,あちらから我々が見えたんでしょう。「なんだかおかしいなぁ」。って。我々は,(アメリカ兵から)「ダマーレ,ダマーレ(黙れ)。」(と言われているわけ)ですから,黙っていた。ここから見たんでしょ。
そしたら「メーンサイ,メーンサイ。」って言っておばあちゃんを呼んでいるわけ。おばあちゃんを呼んでいるけど,こちらは「黙れ。」だから,答えられない。この人,ここから避難小屋に入って行きよったよ。タオルを出しながら,こうして(ハリガネに掛ける仕草)。
そこで自動操縦をお腹に突き付けられて。そしたら「もうやられたぁ。」と思ったわけ。そしたら,パッと逃げたんだよ。我々は見たんだが。すると,そこの窓の登り口のところの,今はないんだが,(その先が)少し土手だったよ。だから曲がってしまえば自動操縦は(撃っても)当たらないんだよ。だから,こちらから見ておって,「あ,大丈夫。(炊事当番の人は)逃げた。」と思ったわけさ。逃げたと思ったんだが,案の定,この人は逃げた。
そして,後での話し。この人に「どうして逃げたの?」って言ったら,「(アメリカ兵が)こうして自動操縦を持っているのを,手を放して『ダマーレ,ダマーレ。』しよった。」って。だから,これ(引き金から離れた手)が戻るまでに逃げているわけさ。だから,若い者の敏しょう性というのは大変(すごいもの)だね。